「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

13.3.19

「スルガと僕の感情大戦vol8」

「OK。それは…アリって事で話を進めよう」
「サンキュー。そしてだね、その異世界では、5年に一度一つの大会をやるのだ。それはこちらの世界でいう所の武術大会になるのかな、全ての猛者どもがあちらの世界一を決めるのだ。そしてその舞台は…こちらの世界全てだ」
「なるほど…」
「おい?この話長くなるか?」
スルガがつまらなさそうに入ってくる。
「いやスルガが説明しろって言ったから説明していますけど!それをそんな言い草ひどくない?」
キノコの言い分もすごく正論だ。しかしもうスルガ自身はその受け答えすら無視している。なんて自分勝手な。しかし、妹もそうだが女子なんてものは大概がそうなのかもしれない。
「まあともかく、そしてその大会が今年行われてそれにエントリーしてるのがこのスルガなんだ。そこまでは?」
「うん…まあ分かる。でもさ、その…俺が…武器?になるってのは」
「そう、その戦い方ってのがその世界の人間と契約して武器に変えるっていう事なんだ」
ボリボリ。
「武器に変えるって言ってもさ、それを全て変えるという発想ではないのは分かるよね」
ボリボリボリボリ。
「武器に変えるのは君自身じゃなくて、そう、君の感情なんだ。つまりね…」
ボリボリボリボリボリボリ。
「うるさいなあスルガ!人が説明してる中ボリボリボリボリうるさいよ!」
見るとスルガはどこから手に入れたのか、ポテロング的なものを食べている。そらうるさいわなあ。しかし本当に、説明の合間にボリボリしているのでちゃんと説明が聞けていない。
「ねえ、キノコさん」
「誰がキノコだ!俺にはちゃんとしたキムという名前があるんだ!」
「あ、ごめんキムさん。つまり僕はその、スルガさんの武器に…それも精神が武器にされてるって…いう事ですか」
「そう!飲み込み早いね!威砂貴くん!」
そう言うとキノコ…いや、キムさんは嬉しそうに跳ねた。飲み込み早い方で良かったな、と思う。しかし、これを俺がシンプルに飲み込んでる訳ではないという事は一体誰に伝えたらいいのだろうか。
「あのさ、キムさん…」
「ん?なんだい?」

13.3.12

「スルガと僕の感情大戦vol7」

けっこうな無茶を言ってくるなこのキノコは…しかし確かにここの異世界の話を聞くとどんどん「よし、契約成立だな」
「契…約?」
その契約の意味を聞く前に、スルガが少し笑ったのがはっきりと目に焼き付いた。
「この世界の全ての闇よ、この世界の全ての光よ、悠久を経て我の愛を超えよ!」
そう言い終えるとスルガの周りを光が囲った。その出来事に驚く暇も無く、僕の体をその光が包んだ。そして僕の胸にスルガが手を当てて、僕の体から、一本の剣を取り出した。
「え?え?俺も?え?どういう事?」
「大丈夫だよ、威砂貴。そして…威砂貴のおかげでわずか一秒で」
「一秒で?」
「…終わる」
そう言ったスルガはあの槍の男に近付いていった。否、近付くというよりそのスピードは刹那であり、気付けばその男の目の前で剣を振りかぶっていた。
斬っっっっ!
「すまんね、その…名前も知らない雑魚さん」
先ほどまで威勢が良かったあの槍の男(僕も当然名前が分からない)は、静かに膝を地面に落として前のめりに倒れた。その様はまるで昔テレビで見た時代劇のワンシーンのように、妖艶でいて、それでいて全てが静寂の美しさを物語っていた。
しかしそれが何かを分からない人間からすれば、目の前で起こってる事を現実と思えという方が酷でしかない。
「おい…これって一体なんなんだよ!」
「威砂貴、君はどれだけ質問攻めするのだ?」
「いや当たり前だろう!こんな出来事があったんだぞ!」
「ははーん、君は決してモテるタイプではないな」
「なんで今そんな事を言われてるんだよ!」
「スルガ、彼の言い分も確かに分かるよ」
肩に乗っていたあのキノコがスルガの胸から出てきて急にしゃべり出した。そうか、こんな所に隠れていたのか。道理で対決の時に姿も声も見えない訳だ。しかしあんな所に隠れるとは…なんて羨ましい。
「そうか、じゃあキム説明してくれ」
「お前が説明しないのかよ!まあいいか…おい、威砂貴よ。分かりやすく説明するけどな。これはさ、一つのゲームみたいなもんだ」
「…ゲーム?」
「簡単に言えばなんだがな。威砂貴、お前が今生きている世界があるよな、その世界とはまた別の世界がこの世にはあるのだ。俺やスルガはその別の世界の住人だ。で、ここで躓かれると俺はこれ以上説明が出来ないようになってしまうのでなんとか飲み込んでもらえるかな」
話は広がってしまいそうだ。

13.3.8

「スルガと僕の感情大戦vol6」

「よし、契約成立だな」
「契…約?」
その契約の意味を聞く前に、スルガが少し笑ったのがはっきりと目に焼き付いた。
「この世界の全ての闇よ、この世界の全ての光よ、悠久を経て我の愛を超えよ!」
そう言い終えるとスルガの周りを光が囲った。その出来事に驚く暇も無く、僕の体をその光が包んだ。そして僕の胸にスルガが手を当てて、僕の体から、一本の剣を取り出した。
「え?え?俺も?え?どういう事?」
「大丈夫だよ、威砂貴。そして…威砂貴のおかげでわずか一秒で」
「一秒で?」
「…終わる」
そう言ったスルガはあの槍の男に近付いていった。否、近付くというよりそのスピードは刹那であり、気付けばその男の目の前で剣を振りかぶっていた。
斬っっっっ!
「すまんね、その…名前も知らない雑魚さん」
先ほどまで威勢が良かったあの槍の男(僕も当然名前が分からない)は、静かに膝を地面に落として前のめりに倒れた。その様はまるで昔テレビで見た時代劇のワンシーンのように、妖艶でいて、それでいて全てが静寂の美しさを物語っていた。
しかしそれが何かを分からない人間からすれば、目の前で起こってる事を現実と思えという方が酷でしかない。
「おい…これって一体なんなんだよ!」
「威砂貴、君はどれだけ質問攻めするのだ?」
「いや当たり前だろう!こんな出来事があったんだぞ!」
「ははーん、君は決してモテるタイプではないな」
「なんで今そんな事を言われてるんだよ!」
「スルガ、彼の言い分も確かに分かるよ」
肩に乗っていたあのキノコがスルガの胸から出てきて急にしゃべり出した。そうか、こんな所に隠れていたのか。道理で対決の時に姿も声も見えない訳だ。しかしあんな所に隠れるとは…なんて羨ましい。
「そうか、じゃあキム説明してくれ」
「お前が説明しないのかよ!まあいいか…おい、威砂貴よ。分かりやすく説明するけどな。これはさ、一つのゲームみたいなもんだ」
「…ゲーム?」
「簡単に言えばなんだがな。威砂貴、お前が今生きている世界があるよな、その世界とはまた別の世界がこの世にはあるのだ。俺やスルガはその別の世界の住人だ。で、ここで躓かれると俺はこれ以上説明が出来ないようになってしまうのでなんとか飲み込んでもらえるかな」
けっこうな無茶を言ってくるなこのキノコは…しかし確かにここの異世界の話を聞くとどんどん話は広がってしまいそうだ。

13.2.27

「スルガと僕の感情大戦 vol5」

「さあ、威砂貴よ。来い。大丈夫だ、始めは怖いかもしれない。しかし、じょじょに慣れて、最終的には快感になるものだ」
「なんかもう全然違ういやらしい言葉にしか聞こえないんだけど」
「そうか、じゃあもっとそっちに寄せてもいいか…威砂貴…来て…」
「いやだからそういう事ではなくて!」
そのやりとりに辟易したのか、男がしゃべり出す。
「おいおい、そんな男が一体どんな武器になるっていうんだ?」
「黙れ。お前みたいなザコに分かるレベルの話じゃないんだ」
「ほう…うちの武器を見てもそう言えるかな?」
男はそう言うと、横の女性(だいぶ若い感じがする、中学生くらいか)の胸に手を当てた。僕はびっくりした。そういう公衆の面前で、なんだかんだをやるという人がいるのは知っていたけども、まさか目の前で繰り広げられるとは!
「いや、威砂貴、それは違うぞ」
どうやら僕の心の声はだいぶと大きな声を発していたらしい。
「じゃ、じゃあこれは…」
「言ったろう。武器だと」
そう聞いた瞬間にその女の子の胸から一本の槍が出てきた。
「え?」
「分かったろう?これがこの男の武器になるものなのだ」
「いや、え?」
やばい。どう考えたって理論的ではない。そもそも何故こんな僕より身長が低い女の子から2メートルを優に超える槍が出てきたのか。
「そうか、マジックだ!なるほど、そういう事か」
「威砂貴、現実を見ろ。これはマジックではないぞ」
「そうか、あの子はプリンセステンコー的な女の子だった訳だな。なるほど、そう考えると全ての道理が繋が…」
言い切る前にその男はその槍をこちらに力任せに振りかぶってきた。避けようがないという一瞬で僕は体が勝手に動いていた。否。スルガに抱えられ、空に浮いていたのだ。これ自体もえらくプリンセステンコー的になってしまってるのだが、あいにくな現実を見せられたような気がして、僕は気付けば叫んでいた。
「こ、これ一体なんなんだよ!」
「だから何度も言ってるだろう。私の武器になれと」
「武器になったら終わるのかこれが!」
スルガは少し考えて、細い声で言った。
「ああ。何にせよ終わるよ」
槍の男の攻撃はまだまだ続いている。僕は、ただスルガに抱えられ、その槍の猛追から逃れているだけだ。僕がそのままなら僕は何度も何度も死んでいただろう。しかしスルガも決して反撃する事はなくて、これを僕はどう取っていいのか全然分からなかった。
「じゃ、じゃあ早く終わらせてくれよ!」

13.2.21

「スルガと僕の感情大戦vol.4」

一瞬…を超すような、もっと言えば永遠にしか思えない思考停止。その挙げ句出した答えは非常に陳腐な結論だった。

『この子は何を言ってるのだ?』
やばい。さっきまでの違和感がはっきりと言葉になった。
この子は頭がおかしいのだ。
「いえ、えっと、僕はそういうの分からないので」
「まあ、今襲ってきてる相手は格下だから大丈夫だから」
「いや、全然会話になってないのですけど」
「まあ決して痛かったりはしないから」
「いやだから聞いてますか?僕はそんな事をする義理も何も」
「よし、とりあえず目をつむってくれ」
「だから聞けって言ってんだよ!」
こんなに会話が出来ない事なんて今までの人生でなかった。妹との会話なんてこの無理問答と比べたら、序の口でしかなかったんだなと痛感した。しかし、その自分に対する虚無感なんて今から進めなきゃいけない事に比べたらそれもまた序の口だった。
とりあえずこの赤髪の意見を全否定する。それが今の僕に与えられた最高で、最大のミッションだ。
「すみません、とりあえず僕はもう全く何も分からないので、帰らせてもらいますから」
「そうか、名前もまだ言ってなかったな」
これはもう無理問答のチャンピォンでも叶いっこないな。
「名前はスルガ。スルガ・ヴァン・セリウス。スルガでいいよ。よし、武器。お前の名前は?」
もう武器って呼んでるんだけど。その名前を聞く限り日本人ではなさそうだ。
「で。お前の名前は?」
「僕は…葉壁。葉壁威砂貴」
「威砂貴か。うん、いい名前だ。よし、威砂貴。武器になれ」
うわあ。全然聞いてない。どうしよう。むちゃくちゃだ。とりあえずもう無視して帰ろう。
と思った瞬間だった。くそ。えらく瞬間が溢れてる。
寸。
という音と共に今までそこにいなかった男と女がそこに現れた。
「よう。見つけたぜスルガ。こんな所にぼーっと立ってるなんて思わなかったぜ」
「別にお前みたいなものに隠れるなんて事考えてもなかったからな」
「減らず口だな。まあ、それがお前が最後に喋る減らず口になるわけ…だがな!」
ドゴオオオオン!
また懲りもせず変な音が鳴ったな、と思ってたらそのレベルではないとすぐ気付いた。
飛んでくる粉塵とすごい風。一瞬何が起こったのか分からなかったのだけど、それが今さっき現れた男が起こした攻撃のせいだと分かったのはその男が急に喋ったから。
「スルガ、まだ武器は見つけれてないんだろう?お前みたいな一流が何もやり返さないって事はそういう事だわな」
「半分正解って所だな…別に私は武器を見つけれてない訳ではない。なんなら武器はもう見つかってるのだ」
と言って俺を少しの笑顔で見てきた。やばい。これはもう逃げようもないのかもしれない。