「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

14.2.25

「スルガと僕の感情大戦vol30」

なんとか息を急いで整えて、そこから、とりあえず玄関を開けて靴の感じを見る。ふむふむ。いつもなら靴が脱ぎ捨ててある感じなのだが今日はそんな事はない。なるほど、まだ亜寿沙は帰ってきていないみたいだ。
それを確認すると、後ろにいるスルガを玄関の中に入れる。ここは迅速に動かなければならない。なぜなら、スルガを玄関に立たせておくと、ご近所さんから変な風に思われる事請け合いだからである。
「ほう、これがこの世界の住まいなのか…」
えらくほう、ほう、と言いながら四方八方を見るスルガを横目に、僕は一旦妹の部屋に行く事にする。
「お、おい、待て!どこへ行く?」
「いや、すぐ帰ってくるから!着替える服を用意してくるから!」
そう言って二階の妹の部屋へ。しかしドアの前に立つと案外緊張している自分に気付く。
「…そういや、妹の部屋に入るのって、いつ以来だ…」
呟いたとて、正確な時間が出る訳でもない。が、おそらくここ3年は入っていないだろう。そう思うとどうも奇妙な背徳感に苛まれる。
「いや、そんな事を言っている場合ではない!」
僕は目を瞑ってドアを開けた。それは少しばかりの罪滅ぼしだったのかもしれない。
そっと目を開けるも、当然そこには誰もおらず、少し良い匂いがした。
見渡すと、全体的に非常にガーリーな部屋で、基調はピンク、になるのだろうか。そう思わせるには充分過ぎるピンクの布団の所には可愛いライオンのぬいぐるみがあり、壁には可愛い女の子5人組のアイドルのポスター。
とにかく女子の部屋、という感覚が強い部屋だった事に僕は驚いた。
どっちかというと、がさつなタイプだと思ってたのに、こんなにも少女趣味な感じだったとは…。
机も当然甘ロリのような色使いで、それこそポエム帳なんてものもあるんじゃないかな、なんて本棚に目を軽く通すと、背中に『AZUSA POEM NOTE VOL4』という、ノートには少し分厚い文具を見つけてしまった為、僕は頭を抱えて、それから目を離す。
「しかも4か…けっこう巻数出てるなあ…」