「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

14.2.23

「スルガと僕の感情大戦vol29」

そうやってなんとか着替えさせる気持ちを成功させたのは良かったのだが、その服を一体どうするのだという話になってくる。
僕みたいな者が、女性の服でここ!という店を知ってる訳も無く、かといって手に入れる為にちょいと洗濯物を…なんてなると真剣な盗人だ。それをやる勇気も無謀さもない。
うーんと唸って、自分の女性の履歴を脳内で探った結果、一件がヒットした。
亜寿沙、つまり僕の妹である。
妹なら、このスルガの身長と一緒くらいだし、問題はないのではないだろうか。いやしかし、妹の服を勝手に持って行くというのも、今さっき挙げた盗人とさして変わらないのではないだろうか…
「おいー威砂貴-。どうするんだー?」
見るとスルガは体を左右に動かしながら、こっちを退屈そうに見ている。それはまるで子供が親の井戸端会議の終わりを待っているようなそれだった。
やばい。せっかく服を着替えさせるタイミングが来たというのに、これを逃している場合ではないぞ。
「よし、スルガ、とりあえずこっちだ!」
時間をかけている場合ではない。とにかくスルガを自分の家の方向に連れて行く。
「おそらくこの時間なら、多分まだ亜寿沙は家に帰ってないはずだから…」
淡い期待を胸に、なんとか家まで小走りで向かう。
そして家に着く。いつもの下校にかける時間と比べると、だいぶと早く着いたが、僕は玄関前で少し息を整える。
「どうした威砂貴?ここが目的地なのか?入らないのか?そもそもここはどこだ?走ってた時に皆がこっちを見ていたがなんだったんだ?もしかしてピザを食べるのをジャマしようとしているのか?何故息が切れているのだ?息が切れる程まだ何もしていないではないか?体力がないのか?」
…疲れている時に、こうも質問攻めされると何も答えられませんけど。と思うも、僕はスルガを軽く睨みながらゼエゼエ息を切らす事しか出来なかった。