13.3.12
「スルガと僕の感情大戦vol7」
けっこうな無茶を言ってくるなこのキノコは…しかし確かにここの異世界の話を聞くとどんどん「よし、契約成立だな」
「契…約?」
その契約の意味を聞く前に、スルガが少し笑ったのがはっきりと目に焼き付いた。
「この世界の全ての闇よ、この世界の全ての光よ、悠久を経て我の愛を超えよ!」
そう言い終えるとスルガの周りを光が囲った。その出来事に驚く暇も無く、僕の体をその光が包んだ。そして僕の胸にスルガが手を当てて、僕の体から、一本の剣を取り出した。
「え?え?俺も?え?どういう事?」
「大丈夫だよ、威砂貴。そして…威砂貴のおかげでわずか一秒で」
「一秒で?」
「…終わる」
そう言ったスルガはあの槍の男に近付いていった。否、近付くというよりそのスピードは刹那であり、気付けばその男の目の前で剣を振りかぶっていた。
斬っっっっ!
「すまんね、その…名前も知らない雑魚さん」
先ほどまで威勢が良かったあの槍の男(僕も当然名前が分からない)は、静かに膝を地面に落として前のめりに倒れた。その様はまるで昔テレビで見た時代劇のワンシーンのように、妖艶でいて、それでいて全てが静寂の美しさを物語っていた。
しかしそれが何かを分からない人間からすれば、目の前で起こってる事を現実と思えという方が酷でしかない。
「おい…これって一体なんなんだよ!」
「威砂貴、君はどれだけ質問攻めするのだ?」
「いや当たり前だろう!こんな出来事があったんだぞ!」
「ははーん、君は決してモテるタイプではないな」
「なんで今そんな事を言われてるんだよ!」
「スルガ、彼の言い分も確かに分かるよ」
肩に乗っていたあのキノコがスルガの胸から出てきて急にしゃべり出した。そうか、こんな所に隠れていたのか。道理で対決の時に姿も声も見えない訳だ。しかしあんな所に隠れるとは…なんて羨ましい。
「そうか、じゃあキム説明してくれ」
「お前が説明しないのかよ!まあいいか…おい、威砂貴よ。分かりやすく説明するけどな。これはさ、一つのゲームみたいなもんだ」
「…ゲーム?」
「簡単に言えばなんだがな。威砂貴、お前が今生きている世界があるよな、その世界とはまた別の世界がこの世にはあるのだ。俺やスルガはその別の世界の住人だ。で、ここで躓かれると俺はこれ以上説明が出来ないようになってしまうのでなんとか飲み込んでもらえるかな」
話は広がってしまいそうだ。