「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

13.2.27

「スルガと僕の感情大戦 vol5」

「さあ、威砂貴よ。来い。大丈夫だ、始めは怖いかもしれない。しかし、じょじょに慣れて、最終的には快感になるものだ」
「なんかもう全然違ういやらしい言葉にしか聞こえないんだけど」
「そうか、じゃあもっとそっちに寄せてもいいか…威砂貴…来て…」
「いやだからそういう事ではなくて!」
そのやりとりに辟易したのか、男がしゃべり出す。
「おいおい、そんな男が一体どんな武器になるっていうんだ?」
「黙れ。お前みたいなザコに分かるレベルの話じゃないんだ」
「ほう…うちの武器を見てもそう言えるかな?」
男はそう言うと、横の女性(だいぶ若い感じがする、中学生くらいか)の胸に手を当てた。僕はびっくりした。そういう公衆の面前で、なんだかんだをやるという人がいるのは知っていたけども、まさか目の前で繰り広げられるとは!
「いや、威砂貴、それは違うぞ」
どうやら僕の心の声はだいぶと大きな声を発していたらしい。
「じゃ、じゃあこれは…」
「言ったろう。武器だと」
そう聞いた瞬間にその女の子の胸から一本の槍が出てきた。
「え?」
「分かったろう?これがこの男の武器になるものなのだ」
「いや、え?」
やばい。どう考えたって理論的ではない。そもそも何故こんな僕より身長が低い女の子から2メートルを優に超える槍が出てきたのか。
「そうか、マジックだ!なるほど、そういう事か」
「威砂貴、現実を見ろ。これはマジックではないぞ」
「そうか、あの子はプリンセステンコー的な女の子だった訳だな。なるほど、そう考えると全ての道理が繋が…」
言い切る前にその男はその槍をこちらに力任せに振りかぶってきた。避けようがないという一瞬で僕は体が勝手に動いていた。否。スルガに抱えられ、空に浮いていたのだ。これ自体もえらくプリンセステンコー的になってしまってるのだが、あいにくな現実を見せられたような気がして、僕は気付けば叫んでいた。
「こ、これ一体なんなんだよ!」
「だから何度も言ってるだろう。私の武器になれと」
「武器になったら終わるのかこれが!」
スルガは少し考えて、細い声で言った。
「ああ。何にせよ終わるよ」
槍の男の攻撃はまだまだ続いている。僕は、ただスルガに抱えられ、その槍の猛追から逃れているだけだ。僕がそのままなら僕は何度も何度も死んでいただろう。しかしスルガも決して反撃する事はなくて、これを僕はどう取っていいのか全然分からなかった。
「じゃ、じゃあ早く終わらせてくれよ!」