「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

13.2.21

「スルガと僕の感情大戦vol.4」

一瞬…を超すような、もっと言えば永遠にしか思えない思考停止。その挙げ句出した答えは非常に陳腐な結論だった。

『この子は何を言ってるのだ?』
やばい。さっきまでの違和感がはっきりと言葉になった。
この子は頭がおかしいのだ。
「いえ、えっと、僕はそういうの分からないので」
「まあ、今襲ってきてる相手は格下だから大丈夫だから」
「いや、全然会話になってないのですけど」
「まあ決して痛かったりはしないから」
「いやだから聞いてますか?僕はそんな事をする義理も何も」
「よし、とりあえず目をつむってくれ」
「だから聞けって言ってんだよ!」
こんなに会話が出来ない事なんて今までの人生でなかった。妹との会話なんてこの無理問答と比べたら、序の口でしかなかったんだなと痛感した。しかし、その自分に対する虚無感なんて今から進めなきゃいけない事に比べたらそれもまた序の口だった。
とりあえずこの赤髪の意見を全否定する。それが今の僕に与えられた最高で、最大のミッションだ。
「すみません、とりあえず僕はもう全く何も分からないので、帰らせてもらいますから」
「そうか、名前もまだ言ってなかったな」
これはもう無理問答のチャンピォンでも叶いっこないな。
「名前はスルガ。スルガ・ヴァン・セリウス。スルガでいいよ。よし、武器。お前の名前は?」
もう武器って呼んでるんだけど。その名前を聞く限り日本人ではなさそうだ。
「で。お前の名前は?」
「僕は…葉壁。葉壁威砂貴」
「威砂貴か。うん、いい名前だ。よし、威砂貴。武器になれ」
うわあ。全然聞いてない。どうしよう。むちゃくちゃだ。とりあえずもう無視して帰ろう。
と思った瞬間だった。くそ。えらく瞬間が溢れてる。
寸。
という音と共に今までそこにいなかった男と女がそこに現れた。
「よう。見つけたぜスルガ。こんな所にぼーっと立ってるなんて思わなかったぜ」
「別にお前みたいなものに隠れるなんて事考えてもなかったからな」
「減らず口だな。まあ、それがお前が最後に喋る減らず口になるわけ…だがな!」
ドゴオオオオン!
また懲りもせず変な音が鳴ったな、と思ってたらそのレベルではないとすぐ気付いた。
飛んでくる粉塵とすごい風。一瞬何が起こったのか分からなかったのだけど、それが今さっき現れた男が起こした攻撃のせいだと分かったのはその男が急に喋ったから。
「スルガ、まだ武器は見つけれてないんだろう?お前みたいな一流が何もやり返さないって事はそういう事だわな」
「半分正解って所だな…別に私は武器を見つけれてない訳ではない。なんなら武器はもう見つかってるのだ」
と言って俺を少しの笑顔で見てきた。やばい。これはもう逃げようもないのかもしれない。