「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

13.2.12

「スルガと僕の感情大戦 vol.3」

今日もまた普通の一日だ。いろいろ毎日違う所はあるとはいえ、ほぼ変わる事なく進んでいく毎日。おそらく僕の一生というのはこれがずっと続いていくのだろうと漠然と思っている。それはおそらく正解だろう。いつもの兄妹ゲンカ、母の皿を洗う音、いさちゃんと呼ばれる言葉、別に変わる事なんてない学校への通学路。これに対して何が変わる事なんて何もない。
と思っていた。

その瞬間に。

あまりにもそれは突然すぎて僕はどう反応していいのか分からなかった。いや、どちらかというと、それは想像の範疇内の出来事、というかもっと絞った言い方になると、それはそういう特殊な小説を読んでいれば分かりやすく反応できていたのかもしれない。
つまり。
ドンガラガッシャーン!
その通学路の道程の中で、いきなり俺の目の前に空から女性が降ってきた。それも赤髪の。見た事ない服を着てる。その肩には何かキノコに似た物が乗っている。
「なんだなんだ…?」
置かれている状況が全く分からないままただただ立ちすくんでると、その赤髪が起き上がってこちらを見てる。
「…えっと、大丈夫でしょうか?」
勇気を振り絞って聞いてみた。
「キム、どんな感じかなこの子?」
あれ?この赤髪誰に一体誰に喋りかけたのだ?と思った瞬間。
「んー、ちょっと待ってくれよ。なるほどね、レベルは25から40、属性はセカンドだ。決して悪くはないけどな」
初めは誰が喋ったのか分からなかった。目を凝らしてようやく分かった。喋ったのはその肩に乗せていたキノコだった。よく見たらキノコの柄と思ってた所に顔に見える何かがある。
「しかし時間がない。この状態からすればもうこれは確定で問題ないだろう」
「なるほど。サンキュー、キム。そうだな。ファーストの方が私には合うんだけどな。でも…これは何がなんでもそうしなきゃいけないという事か。」
どうしよう。何か勝手に話が進んでるのだが、いかんせん何の話か分からない。これは君子危うきになんとやらだ。とりあえずこの場から立ち去ろうとしたその時。
その赤髪に手を掴まれて体をその身に寄せられた。そしてこの怒濤のまるでフィクションのデパートみたいな状態の中で、それを全て記憶から消すような一言を耳元で呟かれた。

「お前…私の武器にならないか?」