「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

13.8.20

「スルガと僕の感情大戦vol23」

「いいねえ、お前。だいぶ強いじゃないか。お前、名前は?」
「…ジェム。ジェム=クライダルフ=フォクト」
「ジェムか。よし、ジェム。お前に最大の敬意を払って私も本気でこの勝負に臨もう」
「…本気じゃなかった、と?」
「正直ね、僕もこの大会初めてではないのでね、いらない老婆心みたいなのがついてしまったというか、序盤からフルでいく訳にはいかないのだ」
するとキムが少し顔を出した。かなりびっくりしてる顔。これはどうやら老婆心というよりキムの忠告だったっぽい。その手柄を取られた形だからびっくりしているのだろう。
「面白い。それでこそ、あのスルガだ」
水色…改めジェムが、戦いの流れを変えようとしたのか、自ら剣を引き、少し下がった。状態は違えど、戦う前と同じ距離になった。
僕は別に当然ながら戦いの才能がある訳でもないが、この空気から二人の強さを感じていた。しばしの沈黙。この間が次の一手をどうするか見てる者からしても興味深くなる。その間を破ったのは、舞台にいる二人ではなかった。
雁!
鈍い音と共に僕の頭に衝撃が走る。
え…?
倒れながらも衝撃のあった方も見るとそこにはあのあちら側の武器…御徒くんが立っていた。手には鉄パイプを持っていた。
倒れた僕に向けて嘲笑している御徒くん。いや御徒。
「な…何を急に…」
「何を急にじゃねえよ。もともと俺とお前の因縁からのスタートだろ?当然ここのケンカもあるに決まってるだろ?」