「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

13.2.5

「スルガと僕の感情大戦 vol.2」

朝食には手間取ったが、とりあえず始業時間には間に合いそうだ。外は分かりやすいくらいの晴天。これくらいの時間にこれくらいのペースで学校に向かうのが自分に一番合ってるのだろうなあ。ゆっくり歩きながらそんな事を考えていたら、後ろからとんでもない大声が聞こえてきた。
「おはよー!」
「お、おはよう」
声の主は浅岡有里音。今でこそ家は離れたものの昔から知ってる、俗に言う幼なじみってやつだ。
「いさちゃん、まだだいぶ眠そうだけど大丈夫?」
いさちゃんなんて呼ぶのは先述した通り幼なじみという立場の賜物なのである。だって他にいさちゃんなんて呼んでる人いないし。そもそも有里音自体子供の時に僕をこう呼んでたか定かではない。
「昨日もどうせゲームとかしてたんでしょ」
「どうせって…俺だって勉強とかで夜更かししたりもするかもしれんだろ」
「いーえ。いさちゃんは試験が近くにないのに勉強しないもの!」
「ぐ…そう言われると…痛い」
その台詞を聞くと僕の方を見て有里音は笑った。眼鏡と長い黒髪が似合うその笑顔がやけに今日はまぶしかった。この有里音も亜寿沙と一緒でだいぶ男子人気はすごいのだ。聞く所によるとおとなしそうな雰囲気の中にフェロモンがあるらしい。これは亜寿沙の時より分からないではない。しかしフェロモンと言われたらあまりピンと来ない。昔から知ってるからこそなのか。やはり僕は妹も幼なじみも、属性というのがないらしい。
しかしそんな事を考えてる事すら知らないだろう無邪気なこの幼なじみはお喋りをやめない。
「だからいさちゃん!最近テストの順位も良くなかったりするじゃない。だから私が勉強教えてあげるから」
「いいよ。昔じゃあるまいし、お前に教えてもらう事なんてない」
「いいの?学園トップに教えてもらう機会なんてそうそうないよ!」
「そういうの自分で言うものなのか?」
「まあ、また気分が変わったら教えてよ。いつでも私はその準備OKだから!」
そう言って有里音は走っていった。有里音は生徒会長もやっているから今日は何か生徒会の何か、会議的な事があるのだろう。そうでないと、運動音痴な、あの有里音が走る事なんてあるはずがないだろうから。
「きゃっ!」
ほら、走っていった先でつまずいている。そもそもあそこでつまずく事なんてないだろう。確か何もない所だ。有里音は少しバツが悪そうにしてこっちを見て舌を出してまた走っていった。