13.5.29
「スルガと僕の感情大戦vol18」
「なんで!?」
と、思ったままの言葉が口から出てしまった。それを聞いた橘と有里音が、どういう会話を直前までしてたか知らないが
「やっぱりそうだよな。ごめん、ヨーグルトにご飯は違うよな」
「ごめんね、いさちゃん」
と言った。しかしそんな声も耳に入らない。それほど僕は校門前にいるという彼女の意味が分からなかったのだ。
すると向こうも僕に気がついたのか、僕に向かって手招きをした。来なきゃこっちから行くけどみたいなオーラを出しながら。まずい。学校では極力何の問題も起こしたくないのだ。それにこんな奇妙なコスプレみたいな格好をした赤髪女が知り合いとなると有里音も橘もものすごく面倒くさいリアクションをするのは目に見えている。
となると選択肢は一つだ。
「ごめん橘、ちょっと野暮用思い出した!俺先帰るわ!じゃあな!」
と言い切る前に教室を飛び出した。
「お、おい!威砂貴!」
威砂貴!と言った後も橘は何か喋っていたようだが、僕には全く聞こえなかった。それくらい僕は全速力で走ったし、全速の心臓の音が邪魔をした。
とりあえず何をしにきたのか。それを聞かなければ。
気付いたら校門まで後少しの所まで来ていた。おそらく校門までの最速ラップになるんじゃないだろうか。校門の方は、遠目に見てもざわざわしてるのが分かった。そりゃそうだ。あんな奇妙な出で立ちの赤髪女が立ちはだかっているのだから。
そしてここまで校門の近くに来てからもう一つの問題に直面する。
『一体どうやって彼女とコンタクトを取ればいいのだ?』
ここで待たせたな、みたいな事で急に僕がしゃべり出した時、この野次馬達はなんて思うだろうか。次の日にはろくでもない噂で溢れて、僕はコスプレ趣味の変な女と付き合ってるだとか言われるだろう。なんだったらそれもまだまともな方で、あれがお母さんで、お母さんが劇的に厨二病を患っているであるとか、あれは実は女装子で、同じ趣味を持ってる葉壁を迎えに来たであるとか、最悪な噂を考え出すと無限大だ。
そう考えると今この学校の付近でコンタクトを取る訳にもいかない。しかし、どこかで待ち合わせするなんて事も不可能だ。彼女の連絡先を知らないし、そもそも彼女が携帯電話的な物を持ってるかも微妙な所だ。まあ、一度あのキノコが携帯電話を何かの例えで使ってたから知ってるのは知ってるかもだが、とにかくこの方法も無理だ。
どうする、俺。