13.5.8
「スルガと僕の感情大戦vol15」
なんて思考が途切れたきっかけは有里音が僕の机を叩いた音だった。
「もーう、いさちゃん!なんであんなに遅刻したの!あの時にあそこにいたんだからどれだけゆっくり来ても一時限目の途中には間に合ってるじゃないの!」
その様を橘が横でニヤニヤして見ている。
「そうだよな有里音ちゃん。ほらやっぱり心配してるだろ。有里音ちゃんもう首輪をこいつに付けて毎朝連れてきてやりなよ」
「え!?そ、そんな首輪だなんて…そんな橘君!そ、そりゃ毎日一緒に学校に来たいけどさ…って、にゃ、にゃに言わせるのよ!」
有里音は真っ赤になりながらとんでもなく可愛い噛み方をして、それによりもっと顔が赤くなっていった。それを見てまたニヤニヤしている橘。いつもの光景だ。
「いや、それは本当にいろいろあってさ」
しかしそれだけでは片付かない事は分かってるのだが。それでもそう言わないと。本当の事を言った時の有里音のひく顔と共に橘のニヤニヤが最高潮になるのはもう必至だ。
「おいおい、何か本当の事を隠してるんじゃないんですか?おいおい!本当の事言えよ!」
この橘というのはなんでこんなにポカンとしてるのにこのあたりだけ勘が良いのだろうか。しかもこんなにズバズバと。
「何もないって言ってるだろ!」
「いやいや、あなた嘘ついてる時はいつも眉毛が上がるからねえ」
そう言われてぱっと眉毛を触ったのが運の尽き。ニヤリとした橘。怒ってるのだが不安の方が勝ってるという微妙な顔をした有里音。ダメだ。溜息しか出てこない。
「やっぱり嘘ついてるんでしょいさちゃん!もう!何があったの?!」
「いやだから別に何もないって…」
「そんな訳ないでしょ!何?私にも言えないの!ねえ!いさちゃん!いさちゃんって!」
それをいかに否定しようかと思った瞬間に前から聞き覚えのない声が聞こえた。
「うるさいな!」