13.4.10
「スルガと僕の感情大戦vol11」
「つまり威砂貴、お前はこの大会規定第94条に乗っ取りスルガがこの大会を優勝するか、敗北するかまで武器としてこの戦いに関与しなければならない、という事だ」
そうだよね。そうなんだよね。あーあ。やっぱり、そういう事言うよね。なんかひっくり返るくらいのとんでもない事言われてるんだけども、ゆっくり気付いて良かったなあと思う。が、状態は決して変わる事はないし、とにかくこれからの事を考えると、キムさんにもう少しお話聞かせてもらわないと。
「キムさん」
「なんだい?」
「キムさん、それはもう…解約みたいな事は出来ないよね」
「当然だろ!後解約ってそんな携帯電話じゃあるまいし、そんな言い方するんじゃないよ」
キムはそう言ってケタケタ笑った。僕はその気分と反比例して心がズクズクになっていく。今初めてズクズクという言葉を感情に使ってみたが、そんなに良い使い勝手じゃなかったのでもう一生使わない。いや、違う。そんな事は本当どうでもいい。今の問題はそこじゃない。
「もう…仕方ない事なのかな」
「落ち込んでるように見えるぞ威砂貴」
そう言ったのはスルガだった。ちょうどじゃがりこ的なものを食べ終わったのか、空の箱を潰しながら指先を舐めていた。
「そうだね。落ち込んでる…っていったら落ち込んでるかな。というよりこの状態を上手く飲み込めてないというのがでかいのですが」
「何を落ち込むというのかね威砂貴。これははっきり言うがね、僕は強いよ。きっと負けない。だから大丈夫」
「いやいや。どっちかというと早く負けた方が早くこの戦いから抜けれるからいいのに」
そういうとまたスルガはただでさえ大きい二重の目をもっと開いた。
「そうだな。そうか。しかし負けてしまうと…そうか。感情的にはそんなものかもしれんな。うん。にしても変わってるな威砂貴は」