「スルガと僕の感情大戦」

著者 天津 向 all

13.3.8

「スルガと僕の感情大戦vol6」

「よし、契約成立だな」
「契…約?」
その契約の意味を聞く前に、スルガが少し笑ったのがはっきりと目に焼き付いた。
「この世界の全ての闇よ、この世界の全ての光よ、悠久を経て我の愛を超えよ!」
そう言い終えるとスルガの周りを光が囲った。その出来事に驚く暇も無く、僕の体をその光が包んだ。そして僕の胸にスルガが手を当てて、僕の体から、一本の剣を取り出した。
「え?え?俺も?え?どういう事?」
「大丈夫だよ、威砂貴。そして…威砂貴のおかげでわずか一秒で」
「一秒で?」
「…終わる」
そう言ったスルガはあの槍の男に近付いていった。否、近付くというよりそのスピードは刹那であり、気付けばその男の目の前で剣を振りかぶっていた。
斬っっっっ!
「すまんね、その…名前も知らない雑魚さん」
先ほどまで威勢が良かったあの槍の男(僕も当然名前が分からない)は、静かに膝を地面に落として前のめりに倒れた。その様はまるで昔テレビで見た時代劇のワンシーンのように、妖艶でいて、それでいて全てが静寂の美しさを物語っていた。
しかしそれが何かを分からない人間からすれば、目の前で起こってる事を現実と思えという方が酷でしかない。
「おい…これって一体なんなんだよ!」
「威砂貴、君はどれだけ質問攻めするのだ?」
「いや当たり前だろう!こんな出来事があったんだぞ!」
「ははーん、君は決してモテるタイプではないな」
「なんで今そんな事を言われてるんだよ!」
「スルガ、彼の言い分も確かに分かるよ」
肩に乗っていたあのキノコがスルガの胸から出てきて急にしゃべり出した。そうか、こんな所に隠れていたのか。道理で対決の時に姿も声も見えない訳だ。しかしあんな所に隠れるとは…なんて羨ましい。
「そうか、じゃあキム説明してくれ」
「お前が説明しないのかよ!まあいいか…おい、威砂貴よ。分かりやすく説明するけどな。これはさ、一つのゲームみたいなもんだ」
「…ゲーム?」
「簡単に言えばなんだがな。威砂貴、お前が今生きている世界があるよな、その世界とはまた別の世界がこの世にはあるのだ。俺やスルガはその別の世界の住人だ。で、ここで躓かれると俺はこれ以上説明が出来ないようになってしまうのでなんとか飲み込んでもらえるかな」
けっこうな無茶を言ってくるなこのキノコは…しかし確かにここの異世界の話を聞くとどんどん話は広がってしまいそうだ。

13.3.12

「スルガと僕の感情大戦vol7」

けっこうな無茶を言ってくるなこのキノコは…しかし確かにここの異世界の話を聞くとどんどん「よし、契約成立だな」
「契…約?」
その契約の意味を聞く前に、スルガが少し笑ったのがはっきりと目に焼き付いた。
「この世界の全ての闇よ、この世界の全ての光よ、悠久を経て我の愛を超えよ!」
そう言い終えるとスルガの周りを光が囲った。その出来事に驚く暇も無く、僕の体をその光が包んだ。そして僕の胸にスルガが手を当てて、僕の体から、一本の剣を取り出した。
「え?え?俺も?え?どういう事?」
「大丈夫だよ、威砂貴。そして…威砂貴のおかげでわずか一秒で」
「一秒で?」
「…終わる」
そう言ったスルガはあの槍の男に近付いていった。否、近付くというよりそのスピードは刹那であり、気付けばその男の目の前で剣を振りかぶっていた。
斬っっっっ!
「すまんね、その…名前も知らない雑魚さん」
先ほどまで威勢が良かったあの槍の男(僕も当然名前が分からない)は、静かに膝を地面に落として前のめりに倒れた。その様はまるで昔テレビで見た時代劇のワンシーンのように、妖艶でいて、それでいて全てが静寂の美しさを物語っていた。
しかしそれが何かを分からない人間からすれば、目の前で起こってる事を現実と思えという方が酷でしかない。
「おい…これって一体なんなんだよ!」
「威砂貴、君はどれだけ質問攻めするのだ?」
「いや当たり前だろう!こんな出来事があったんだぞ!」
「ははーん、君は決してモテるタイプではないな」
「なんで今そんな事を言われてるんだよ!」
「スルガ、彼の言い分も確かに分かるよ」
肩に乗っていたあのキノコがスルガの胸から出てきて急にしゃべり出した。そうか、こんな所に隠れていたのか。道理で対決の時に姿も声も見えない訳だ。しかしあんな所に隠れるとは…なんて羨ましい。
「そうか、じゃあキム説明してくれ」
「お前が説明しないのかよ!まあいいか…おい、威砂貴よ。分かりやすく説明するけどな。これはさ、一つのゲームみたいなもんだ」
「…ゲーム?」
「簡単に言えばなんだがな。威砂貴、お前が今生きている世界があるよな、その世界とはまた別の世界がこの世にはあるのだ。俺やスルガはその別の世界の住人だ。で、ここで躓かれると俺はこれ以上説明が出来ないようになってしまうのでなんとか飲み込んでもらえるかな」
話は広がってしまいそうだ。

13.3.19

「スルガと僕の感情大戦vol8」

「OK。それは…アリって事で話を進めよう」
「サンキュー。そしてだね、その異世界では、5年に一度一つの大会をやるのだ。それはこちらの世界でいう所の武術大会になるのかな、全ての猛者どもがあちらの世界一を決めるのだ。そしてその舞台は…こちらの世界全てだ」
「なるほど…」
「おい?この話長くなるか?」
スルガがつまらなさそうに入ってくる。
「いやスルガが説明しろって言ったから説明していますけど!それをそんな言い草ひどくない?」
キノコの言い分もすごく正論だ。しかしもうスルガ自身はその受け答えすら無視している。なんて自分勝手な。しかし、妹もそうだが女子なんてものは大概がそうなのかもしれない。
「まあともかく、そしてその大会が今年行われてそれにエントリーしてるのがこのスルガなんだ。そこまでは?」
「うん…まあ分かる。でもさ、その…俺が…武器?になるってのは」
「そう、その戦い方ってのがその世界の人間と契約して武器に変えるっていう事なんだ」
ボリボリ。
「武器に変えるって言ってもさ、それを全て変えるという発想ではないのは分かるよね」
ボリボリボリボリ。
「武器に変えるのは君自身じゃなくて、そう、君の感情なんだ。つまりね…」
ボリボリボリボリボリボリ。
「うるさいなあスルガ!人が説明してる中ボリボリボリボリうるさいよ!」
見るとスルガはどこから手に入れたのか、ポテロング的なものを食べている。そらうるさいわなあ。しかし本当に、説明の合間にボリボリしているのでちゃんと説明が聞けていない。
「ねえ、キノコさん」
「誰がキノコだ!俺にはちゃんとしたキムという名前があるんだ!」
「あ、ごめんキムさん。つまり僕はその、スルガさんの武器に…それも精神が武器にされてるって…いう事ですか」
「そう!飲み込み早いね!威砂貴くん!」
そう言うとキノコ…いや、キムさんは嬉しそうに跳ねた。飲み込み早い方で良かったな、と思う。しかし、これを俺がシンプルに飲み込んでる訳ではないという事は一体誰に伝えたらいいのだろうか。
「あのさ、キムさん…」
「ん?なんだい?」

13.3.26

「スルガと僕の感情大戦vol9」

跳ねながらキムさんはこちらを見る。
「あのさ、その…さっきの説明は分かったけどさ、でもそれをこの…なんか認める事が出来ないというか」
キムさんの跳ねがもっと荒くなった。
「いやいや!違うよ!確かにさ、こういう時なんか小説とかであれこれなってる時ってさ、認めないとかあるけどさ!これをどうやって認めない訳?現に君から剣が出てる訳じゃんかよ!何故認めない訳?」
「いや、説明は分かるんですけどどうもそれが現実かどうかというのが」
キムさんの色がほのかに赤色に変わった。
「いやいやいや!違いますやんか!君ここで見たがな!後今喋ってるの誰や!キノコと喋ってるんやで君は!」
どういう事かはっきりと関西弁になった。しかもこの関西弁が正解かどうかも僕は分からない。
「それをなんで認めへんのや!…まあ、そうか。そりゃ君の考えも分かるよ。こんな話誰が信じるんだという話だもんね。でもさ」
キムさんのトーンが少し変わった。
「これが現実であるって君が信じなくても、これは現実なんだ」
そうだよな。と不意に思ってしまった。認めたくないと思ってたのに。でもどんな的確な状況説明よりも、この全てを飲み込むような説得力がある一言に心が揺れてしまったのは本当の事だ。
「まあもういいじゃないか」
声のする方を向くとその場にあぐらを掻いてこちらを見てるスルガがいた。その表情はだいぶつまらなそうだ。
「別に威砂貴にそんなちゃんと説明しなくてもいいだろう。これからまたおいおいと説明していく事になるだろうし」
さすがスルガは、キムさんより落ち着いてるな。まあいいか。とりあえず俺は今日もまた学校に行かなければならない訳なのだから、こんな所であれこれ道草してる場合でもない。時間的にもう遅刻は確定だろうけど、とりあえず学校に向かっていこう。こんな出来事が会った事は誰に言う事も出来ないけれどもこれからどんどん大人になっていき、いつかとんでもない事があったなあと思い出すのかもしれない。そもそも未来の自分ですらこの出来事を、10年後にちゃんと信じれてるかどうかも分からないんだけども。でもまあさっきスルガが言ったように説明もおいおい聞いていけば…
「…え?」

13.4.2

「スルガと僕の感情大戦vol10」

とんでもない事に気付きそうになって鼓動が早くなっている。
「えー?スルガさん?」
「どうした?」
スルガはどこから出したのか、じゃがりこ的なものを食べている。ポテロング的なものと何が違うのか分からないけれども、とにかく食べている。しかし棒状のものが好きなのだなあの娘は。
「あのさ、先ほどスルガが言ってた事って」
「先ほど?…あ、ラフティが誰よりも好きだよ」
「いつそんなの言ってたんだよ!ラフティは沖縄の角煮だろ!」
言ってみたものの沖縄の角煮を説明して一体どうなるのか。そんな軽めの恥ずかしさを感じながらも、僕はスルガにもう一度聞かないといけない事がある。
「スルガ、さっき言った台詞だよ。それをもう一度聞かせてくれ」
「ああ、…ちゃんと説明しなくてもいいだろう」
「その後その後だよ!」
「その後は…これからまたおいおいと説明するって」
僕は聞き間違えてない事に戦慄を覚えた。
「おいおいって…一体どういう事?僕らは…ここで終わる関係だよね?」
自分ながらなんか勘違いされるいやらしい言い方をしてしまったなと思う。
「何を言ってるのだ威砂貴?」
「いや、今日こうやって感情を剣とかにするって言ってたじゃんかよ。まあそれはそれでいいじゃないか。でもおいおいって、これからスルガにもキムさんにも会う事はないじゃないか。だからどういう事かなって」
するとスルガは驚いた表情を見せて口に咥えてたじゃがりこ的なものを噛み砕いた。
「いや、あれ?もう早速説明しなきゃいけない訳?おい、キム説明頼むよ」
「何を説明するってのかい?」
キムさんが現れた。別に何って事もない退屈そうな顔で。
「キムさん、おいおいってどういう事?」
「うんとね、どう説明すればいいかな。威砂貴、お前はスルガの武器になったよな?」
「それはなったけど」
「この大会の説明はしたよね?5年に一回行う大会だって言ったよね?すごい人数がそれに参加してる訳だよね。それが今一回勝っただけで終わる訳はないよね?」
「そりゃ…そうだよね」
やばい。もしかしたらこうなられるとまずいという話になりそうで怖い。いや、そうなるのはこの流れでは確定なのかもしれないけども、それをちゃんとこの耳で聞くという一つの病院で言われる告知的な、なんか分かってるけど怖いあの感じ。しかしそんな事はお構いなしにキムさんは喋り続ける。
「この戦いはまだまだ続く。そしてこの大会規定は、一度利用した武器はこの大会で敗北、もしくは最終勝利まで継続する。分かるか?」
分かってしまう。もう少し難しい言葉で言ってくれたらいいのに。悲しいかな分かってしまう。