1年戦争時代、サイド7がジオンのザクに攻められる直前、
僕にとっての最後の夏休みがあった。
僕の住んでるブロックから少し行けば、自然の多い公園があった。
その公園には50メートルの高さのタワーが建っていた。
夏休みの間、僕はそのタワーで生まれて初めてアルバイトをすることになった。
内容はタワーの上にある展望レストランでのウェイターだった。
夏になるとその公園は家族連れ等で賑わっていた。
戦争中だというのにこのサイドはまるで関係無いかのように平和だった。
普段機械ばかりいじっていて人付き合いが苦手だった僕もアルバイトで徐々に慣れてきた。
その経験のおかげでホワイトベースでもなんとかやっていけたんだと思う。
いつものようにバイトが終わり、帰ろうと公園を通っていると
「君、タワーで働いているの?たまに見かけるんだけど良いGジャンとGパン着てるね」
と、知らない男性に声をかけられた。
「ありがとうございます。これは僕の大好きな音楽家のTさんがプロデュースされた服なんです!宇宙ネットで買いました!」
と言うと
「それ僕も関わったやつだ。」
と言われた。
なんとその男性はそのTさんの事務所の方だった。
「明日Tと会うんだけど良かったら来るかい?」
と言われ、
「行きまーーーーーす!!!」
と言った。
実は戦争に参加する前から僕の口癖だった。
そして次の日ドキドキしながら事務所へ行った。
すると昨日の男性が現れTさんの名前を呼んだ。
まさか、まさか、と思っていたらTさんが現れた。
CDやDVDやステージ上だけの登場人物で実在しないと思っていたのにTさんはそこに実在していた。
挨拶をしたが緊張して声が小さすぎて
「え?」
と聞き返された。
でも笑顔で対応してくださりとても優しい方だった。
「写真はいいの?」
と聞かれたが
「滅相もございません」
と遠慮してしまった。
本当は一緒に撮りたかった。
そしてTさんに僕の手作りの家族コンピュータをプレゼントした。
もちろん家族ベーシックも付けた。
帰ろうとしたその時Tさんが
「君には特別な何かを感じる。この戦争…いや、気にしないで。」
とおっしゃった。
その時その意味は分からなかった。
そしてそれから数日後、僕らは戦争に巻き込まれた。
ザクの爆撃を受け目の前でたくさんの人が死んだ。
その中にTさんを見た。
手荷物に僕の渡した家族コンピュータがあった。
フラウの家族やTさんが目の前で死ぬのを見て僕はガンダムに乗る決意をした。
このザクをやってやると…。
別れ際にTさんが言った言葉は後になって分かった。
Tさんはニュータイプだったんだ。
でも逃げる時、家族コンピュータだけでベーシックは置いてきてたっぽい。
家族ベーシックが面白いのに…。
安西先生、夏休みがあればあの時バイトしたあのタワーをみに行ってみたいです。
アスカ、聞きたいことがあるんだけどシンジ君が眠ってた14年の間何してたの?